利率規制法制の中での位置付け


本法は、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約又は賠償額の予定であれば、貸主が事業者であろうと非事業者(いわゆる「個人」)であろうと区別なく適用がある。したがって、本法は、金銭を目的とする消費貸借に限ってではあるが、利息の最高限や賠償額予定の制限に関する基本原則を定めた法令(一般法)ということになる(民法には、利息の最高限や賠償額予定の制限に関する規定がない)。 本法所定の基本原則を修正する法令(特別法)としては、後述のみなし弁済を規定する貸金業法43条があり、一定の要件を充たす場合には、制限超過の利息、損害金を支払っても、有効な利息、損害金の支払とみなされる。また、本法には罰則の規定がないから、(みなし弁済の要件を満たそうと満たすまいと)制限超過の利息の契約や賠償額の予定をしたり、これらに基づいて利息、損害金を受領しても、直ちに犯罪にはならない。 しかし、いくらでも高利の契約や(裁判外での)取立てをしてもよいとか、みなし弁済規定の要件を満たせばいくらでも高利を受領できるというわけではない。単利換算で年109.5%(2月29日を含む1年については年109.8%、1日当たり0.3%)を超える利息の契約又は賠償額の予定をしたり、これを受領し又はその支払を要求すれば処罰される(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という)5条1項、3項、5項)。業として行われる金銭の貸付け(少なくとも赤字には陥らないことを目標として、反復継続する意思のもとに行われる金銭の貸付け。回りくどい表現だが、反復継続する意思があれば初めての貸付けでも業として行われたことになることをいい表すためである。)については、年29.2%(2月29日を含む1年については年29.28%、1日当たり0.08%)を超えれば処罰される(同条2項。ただし、日賦貸金業者が業として行う金銭の貸付については、当分の間、年 54.75%(2月29日を含む1年については年54.9%、1日当たり0.15%)を超えた場合のみ処罰される。昭和58年法律第33号8項)。このため、市中の貸金業者は概ね年25%ないし29.2%という約定利率を掲げて営業している。 なお、物価統制令9 条ノ2は不当高価契約等を禁止しており、利息は金銭の貸付けという給付の対価(金銭を貸し付けてくれたことに対する報酬)に当たると考えれば、上述の利率規制に違反しない行為でも物価統制令9条ノ2に違反することがあり得るが、出資法6条は、金銭の貸付けについての利息に関しては物価統制令9条ノ2を適用しないとしている。 また、消費者契約法9条2号は、消費者契約に基づき消費者が負う金銭債務の履行遅滞について、損害賠償の額又は違約金の予定の上限を年14.6%に制限しているが、上述の利率規制は同法11条2項にいう「他の法律〔の〕別段の定め」に当たるとされているので、賠償額の予定は年14.6%に制限されない(ただし、保証会社が保証債務の履行を主債務者に請求する場合の賠償額の予定については、消費者契約法9条2項所定の制限が適用される)。

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